てるてる日記

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zoom RSS 「不可逆的深昏睡」=「脳死」

<<   作成日時 : 2009/05/21 22:44   >>

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最近、臓器移植法改正について取り上げるテレビ番組が多い。朝日テレビ(関西では6チャンネル)の「報道ステーション」、フジテレビ(関西では8チャンネル)の「ニュースJAPAN」、毎日放送(関西では4チャンネル)の「ちちんぷいぷい」、日本テレビ(関西では10チャンネル)の「情報ライブミヤネ屋」など。

どれも、海外に渡航して心臓移植を受けて元気になったり、移植を受けられずに亡くなったりした、幼いこどもと、医師からは脳死と診断されながら、一年ないし数年以上、その状態が持続しているこどもとが、紹介されている。

長期脳死のこどもがテレビできちんと紹介されるようになったのは、ごく最近だ。この何年間か、テレビでは、移植関係のニュースというと、移植を受けて元気になったこどもか、移植を受けられずに亡くなったこどもが登場して、こどもにも心臓移植が受けられるように、と訴える番組が多かったので、そのたびに、長期脳死のこどもも取り上げるべきだ、と、掲示板などに感想を書いてきた。

それが、WHOの勧告で海外渡航移植が制限されそうになり、臓器移植法改正がいよいよ国会で審議されそうになって、争点を取り上げなければならなくなって、初めて、テレビでも、長期脳死のこどもが紹介されるようになった。

そして、「ニュースJAPAN」でも「情報ライブミヤネ屋」でも、幼いこどもも心臓移植を受けさせてあげたいが、長期脳死のこどもを目の当たりにすると、脳死はほんとうに死なのか、わからなくなる、と言った。

それは当然だ。

「脳死」は、もとは、「不可逆的深昏睡」と言ったのだ。

それを、移植医療を始めるにあたって、脳死と言うようになったのだ。

長期脳死のこどもが成長を続けているビデオなどを見て、このこどもさんは脳死です、死んでいます、と言われると、え……? と思うが、このこどもさんは不可逆的深昏睡です、と言われれば、ああ、そうですか、と思うのではないだろうか。

不可逆的深昏睡の患者は、おとなの場合、移植医療が始まった頃は、心停止まで一週間ぐらいのことが多かった。こどもは、もっと長期間になる場合もあった。その後、医学が進むにつれて、長期脳死となるこどもの事例が蓄積されてきただけでなく、おとなでも、心停止まで一箇月以上かかる例もふえてきた。心停止になるまでに、一時的にせよ、自発呼吸が戻ったり、意識が戻ったりする例さえある。

数学で、
0.9999999999999999999.......=1
という数式がある。

「不可逆的深昏睡」=「脳死」とは、これと同じである。

諸外国での脳死判定の厳密さは、実にいろいろで、0.9999999999999999999.......の9が10個並んで初めて1とするときもあるし、5個並んで1とするときもある。ときには、2個ぐらいで1としてしまうときもあるようで、そういうときに、脳死と判定したのに意識を回復したり、もうその病院で入院を続けるのを拒否して日本に連れて帰ったら治った、などという話がニュースになったりする。

そうなると、脳死という言葉は、実態を十全に表わしているとは言いがたい。もとの、不可逆的深昏睡という呼び方に戻したほうが正確に病態を把握できるのではないだろうか?

日本で臓器移植法が制定された1997年当時にも、脳死という概念を捨てるべきだと提唱する医師がUSAにおり、参議院の公聴会で、紹介されている。

140回-参-臓器の移植に関する特別委員会公聴会-01号 1997/06/13
○公述人(ぬで島次郎君) 
ぬで島と申します。
 臓器移植を初めとして、先端医療を中心に科学技術を世の中でどう進めていくか、どう社会や国が管理していくかという政策を、ほかの外国ではどういうことをやっていて、日本ではどういうことをやっていったらいいかという調査研究に従事している者です。そういう研究者として本日は意見を述べさせていただきたいと思います。三つのポイントについて申し上げたいと思います。
 まず第一に、臓器移植の今後の先行きはどうなのかということです。どの国でも移植を始めてから件数がふえて成績もよくなるまでには数年かかっております。それに、一応軌道に乗った後も臓器不足が解消されることは残念ながらないようです。その理由として、一つには、欧米でも日本と同じように、脈の打つ体から臓器を取り出すことにかなりの抵抗感があるからだと聞いております。
 アメリカですら、ハーバード大学の小児科救急の医学者が、つい最近、アメリカに権威のある生命倫理の雑誌があるのですが、その雑誌の巻頭論文で、脳死基準は不完全なので、だれもが賛成できる三徴候死、伝統的な死の判定基準に帰るべきであるという、ちょっと私もびっくりしたんですけれども、そういう論文を出しました。これはまだ一人の医学者の意見でしかありませんが、アメリカにもそういう多様な意見があるということだと思います。

ぬで島次郎さんが取り上げている、ハーバード大学の小児科救急の医学者が出した、「脳死基準は不完全なので、だれもが賛成できる三徴候死、伝統的な死の判定基準に帰るべきである」という論文とは、ロバート・トウルオグの「脳死を放棄すべき時か」(Robert D. Truog, Is it Time to Abandon Brain Death? Hasting Center Report, January-February,27,no.1,1997)である。

この論文の要旨は、「アメリカおよびドイツの脳死否定論」(中山研一)で紹介されている。
http://www.lifestudies.org/jp/nakayama01.htm

1997年、第140回国会の参議院で、臓器移植法について審議されたときには、上記の論文も紹介されて、国会議員たちは、少なくとも、そういう考え方もあるということを知ったうえで、審議していたのだ。

しかし、果たしてことし、2009年の第171回国会の衆議院で、どれだけの国会議員が、上記の論文の存在を意識して審議に臨むだろうか、はなはだ疑問である……

なお、ロバート・トウルオグは、移植に反対しているのではない。脳死という概念を捨てたうえで、移植を続けようと提案しているのである。

また、ドイツも、日本と同じ1997年に臓器移植法が制定されたのだが、脳死移植そのものは、その前からおこなわれていた。そして、ドイツの国会では、脳死と診断された妊婦が妊娠が継続して出産する例などが取り上げられ、日本と同じように、脳死を死とするのかしないのか、臓器提供には本人の事前の同意の意思表示を必須の要件とするかどうかが争点になった。結果的には、脳死を死とし、本人の事前の同意の意思表示がない場合にも家族の同意で臓器提供できるという法案が通ったが、脳死を死としない案にも3分の1の賛成があったし、本人の事前の意思表示を必須とする案にも5分の1の賛成があった。

私は、不可逆的深昏睡の患者さんについて、本人が事前に書面で希望しているか、それがない場合は、患者を看取る家族が希望するか、家族もいない場合は、治療者が判断して、第三者機関が審理して認めれば、治療を中止しても違法性を阻却する、つまり、尊厳死を認める、という法律を作ってもよいと思う。

オランダでは安楽死を認めているが、完全に合法化される以前、安楽死を実行する医者を形式的に書類送検して不起訴にするというシステムがとられていた。

安楽死・尊厳死:オランダ
http://www.arsvi.com/d/et-ned.htm

日本でも、家族と治療者の同意だけでおこなうのではなく、なんらかのかたちで第三者機関が関わるシステムを作ったうえで、安楽死ないし尊厳死を認めてもよいと思う。

そのようにして、不可逆的深昏睡の患者の治療を中止する選択もできるようにしたうえで、臓器提供は、本人の事前の書面による同意の意思表示がある場合だけ、認めても良いと思う。おとなの場合は、本人だけでも提供できる、ただし家族が猛反対したために提供をとりやめたとしても罰しないこととし、こどもは、親などの養育責任者の同意も必要とする、という条件で。

これは、現在の臓器移植法の規定とほとんど同じである。

日本以外の国は、臓器提供も、本人か、家族の同意があれば、できるようになっている。

しかし、脳死臓器移植というのは、脳死、すなわち、不可逆的深昏睡の治療を中止しておこなうわけではないのだ。人工呼吸器を付けるなどの治療は継続したままで、一部分、移植のために臓器を保存する薬剤を注入するなどの、患者本人のためではなく、移植患者のための治療に切り替えて、その状態で、臓器を摘出するのである。心停止下の移植でも、心停止する前から、一部分、移植のために臓器を保存する薬剤を注入するなどの、患者本人のためではなく、移植患者のための治療に切り替えている。

つまり、移植というのは、不可逆的深昏睡の患者の治療を中止するのではなく、途中から、移植患者のための医療行為に切り替えるのである。

それが移植の現実である。

ただし、角膜や皮膚は、心停止後、24時間ないし48時間以内に採取すれば移植に使えるので、心停止するまで、一切、移植のための医療行為に切り替えずにおくこともできるし、そもそも、不可逆性深昏睡に陥らない患者からでも、心停止後に、移植のために使うことができる。

なにはともあれ、脳死した、死んだ患者の遺体から臓器を摘出するのだ、などといわずに、不可逆的深昏睡の患者の治療を途中から移植患者のための治療に切り替えるのだ、と、率直に認めたうえで、そのことを説明するパンフレットを付けて、臓器提供意思表示カードを、毎年大量に配布するべきだ。もちろん、現在と同じく、拒否の意思表示もできるようにして。また、心停止するまでは移植のための医療行為をおこなわず患者本人のためだけの治療をしたうえで、心停止後に角膜や皮膚などの提供をする、という意思表示もできるようにして。

そして、本人が同意の意思表示をした人の場合のみ、移植コーディネーターが、本人を看取っている家族などに会うべきである。もっとも、心停止するまでは移植のための医療行為をおこなわず患者本人のためだけの治療をしたうえで、心停止後に角膜や皮膚などの提供をする場合は、本人の事前の同意の意思表示がなくとも、看取った家族の同意だけでもよいかもしれない。その場合も移植コーディネーターが会っても良いだろう。

移植手術を受けた患者は、移植医療保険とでもいうべきものに加入して、不可逆的深昏睡の患者が心停止する前に加えられる移植のための医療行為の費用は、その保険から支払われるのがいいと思う。保険の基金として、募金を集めてもいいと思う。海外渡航移植のために募金を集めたみたいに、ボランティアが協力したらいいと思う。

こどもにも意思表示の機会を与えるべきである。現在では15歳以上になっているが、12歳ないし6歳に引き下げるのが望ましい。

以下の臓器移植法改正私案が、そのような内容になっている。

子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言
森岡正博(大阪府立大学教授・倫理学)
杉本健郎(関西医科大学助教授・小児神経学)
http://www.lifestudies.org/jp/moriokasugimoto-an.htm

現代文明学研究:第3号(2000):139-179
脳死否定論に基づく臓器移植法改正案について
http://www.kinokopress.com/civil/0302.htm

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内 容 ニックネーム/日時
つまりは人工呼吸器に頼らなければ生命を維持できないわけですから、どんなに頑張っても普通の生活に戻れない。医療としての技術の限界ですね。
脳死というのは医者の敗北でしょう?
2009/05/22 06:37
人工呼吸器に頼らなければ生命を維持できないのは、脳死の人だけじゃなくて、ALSとか、いろいろな病気の人がいますね。でもやっぱり、難病ではありますが……。医学は脳死になる人をできるだけ減らすようにと進歩していくはずですし、社会も、交通事故や銃の事件を減らしていこうと、やはり脳死になる人を減らすようにとシステムを整えていく筈です。医療の限界は常に更新され、脳死ドナーはますます不足し続けるのではないかと思います。
てるてる
2009/05/22 20:12
人工呼吸器が将来必要になる疾患と、脳死とでは意味合いがまったく違うのではないですか?


ALSの場合でも人工呼吸器を使用しての筆談はなんとかできます。しかし、それでも延命処置と言われるのです。


脳死された患者さんの数は、臓器提供を待つ患者さんよりはるかに多いです。


提供をされる脳死の方が少ないだけではないですか?


それは仕方のないことですし、それが脳死からの臓器移植を禁止しようとする理由にはなりません。
素人です
2009/05/22 21:40
脳死された患者さんの数が、臓器提供を待つ患者さんよりはるかに多いとは、初めてききました。どこからそのような情報を得られたのですか。
私が今までに知った資料では、どこの国でも、脳死された患者さんは臓器提供を待つ患者さんよりもはるかに少なく、USAでも、移植待機患者のリストが長くなるばかりで、待機中になくなる患者さんも多いと、テレビでも本でも伝えられていました。
例外的に臓器があまり不足していない国として、スペインがあり、スペインでの移植コーディネーターの活躍ぶりは、スペインモデルとして、各国によく取り上げられます。
なお、私は別に脳死からの臓器移植を禁止したいなどと思ってはいませんが……
てるてる
2009/05/23 08:57
それでは、そのことをもっと強く主張されてはどうですか?
私が素人ですよ?
2009/05/23 12:07
年間の脳死患者の発生数は、三千から四千と推定されいますので、提供を待つ患者さんは何十万人もいるんですね?たしか難病でしたよね…
ちなみに…
2009/05/23 12:23
脳死臓器移植に反対する人たちは、他にいるし、私はその人たちと掲示板でけんかみたいになったことがあります。私は、2000年以来、脳死否定論に基づく臓器移植法改正を主張しています。次善として、現行法のもとで提供可能年齢を12歳ないし6歳まで引き下げる森岡杉本案にも賛同しています。
なお、日本臓器移植ネットワークに登録されている移植待機患者数だけならば、日本の年間の脳死患者が全員臓器提供すればドナーが足りるように見えますね。
でも、UNOSのサイトなど見れば、年間2万件の移植手術のあるUSAで待機患者が8万人〜10万人います。また、2万件のうち半数は生体移植です。移植手術がふえればふえるほど移植待機患者がふえるというのが各国で共通して起こっている現象です。日本もそうなるだろうと思います。
てるてる
2009/05/23 20:53
ちょっと説明不足でした。


脳死された方からの移植ということで、心臓の待機中の人だけを見ていましたね。

腎臓の移植待機者は遙かに多いですね。申し訳ありませんでした。


年間の脳死発生数がすべてというのは、無理がありすぎますが。


脳死の診断が下りたときに、今までは意思表示が無ければ提供はされていませんよね?


でも、A案やD案ならすべての年齢の人に脳死の診断で提供をされるかどうかの意志の確認と家族からの了承の有無を拒否を前提に聞くことはできると思うのです。


今は、とにかく臓器を提供する意志があるならなにがなんでも提供に持って行こうとしてしまうことが感情的にあると思います。


でも、多くの方からの意志が確認できるならばドナーとなられる家族の方にもゆっくりと考えてもらえますし、脳死の診断も変わる可能性だってあると思います。


でも、その数日に命を落とされる方が多いのかも知れませんが…
素人です
2009/05/23 23:56
私は、最初にA案を聞いたときに今より提供者がそれほど増えるとは思いませんでした。


私はA案の支持者にも少し態度を改めるべきだと言ったことで、嫌われていますがこれからの日本のためにも反対意見に耳を傾けることも重要だと思ってます。


てるてるさんの意見をお聞きできて良かったです。無礼な質問で申し訳ありませんでした。
素人です
2009/05/23 23:57

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