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zoom RSS 荻上チキ著「ウェブ炎上」の感想

<<   作成日時 : 2007/10/24 14:35   >>

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ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書 683)

この「てるてる日記」からもリンクしている、「成城トランスカレッジ」の管理人荻上チキさんの著書「ウェブ炎上」を読んでいます。

特定のブログが炎上する、という現象には、私も何度も遭遇し、「てるてる日記」でも取り上げたことがあるので、非常に興味がありました。

前半は「ウェブ炎上」のメカニズムの説明です。

私にとっては、「Web2.0」とか、「アーキテクチャ」とか、聞いたことはあるけれども、意味が分からなかった言葉がわかりやすく説明されていて、ありがたかったです。

「サイバーカスケード」という言葉は、私自身が、イラク人質事件のときに知り、それなりに調べて、「てるてる日記」の中でも使ったりしましたが、実に要領よく解説がまとめられていて、改めてよくわかって、それもよかったです。

ウェブではサイバーカスケードが起こりやすい。そのこと自体は善でも悪でもない。

という視点を新たに明示されて、なるほど、と思いました。とかく、私は、サイバーカスケード自体が悪いことのように思い、サイバーカスケードを防ぐにはどうしたらいいのか、ということを考えたくなるからです。

しかし、サイバーカスケードでも、2ちゃんねるの「祭り」でも、いいときには、それで実際に人が励まされたり、善意のボランティア活動が盛り上がったりするのだから、それ自体が悪いのではなく、常に自分はどう振舞うのか、客観的に見ることがだいじだと思いました。

だけど、起こってしまった、「悪い」ほうのサイバーカスケード、リンチといったほうがいいもの、これをできるだけ早く小規模に留める方法なんてのがあれば、知りたいとも思う……

ブログを始めてからブログ中毒みたいになり、ついには燃え尽きるまでの、チキさん自身の体験が生々しく描かれていて、あのチキさんでもそういうことがあったのか、いつもかっこよく見えていたけど……と、ちょっとほっとしました。

そして、後半は、イラク人質事件などの実例のくわしい紹介です。
これまた、私自身も掲示板での議論に参加したり、そのときの体験をまとめて紹介したりしたので、そのときのことを再体験するような気持ちで読むことができました。

「イラク人質事件の投稿分析」の批評・感想集
http://terutell.at.webry.info/200412/article_3.html

当時、私もショックを受けたことですが、2ちゃんねるやYahoo掲示板で、無責任な誹謗中傷が横行しているのはまあいつものことだから慣れていたけど、個人のブログでも似たような状況だったことです。

改めてウェブのこわさ、人間のこわさを思い知ったものでした。

そのことが「ウェブ炎上」でも取り上げられています。
匿名の「便所の落書き」である2ちゃんねるに対して、ブログでは顕名的なコミュニケーションが可能であり、ブロガーたちはただ書きっぱなしで終わるのではなく、相互にトラックバックを送りあったりコメントをつけたりしあうことで有意義な議論を展開するブロゴスフィアが形成され、インターネット上の議論を有意義なものに導くだろうといった期待が高まりつつありました。
(中略)
もちろん、筆写はここで「匿名掲示板と大差のない一行コメント」が悪いと難じたいわけではありません。本書において重要なのはバッシングの是非ではなく、匿名であるか顕名であるかという違いが、この事件の場合はカスケードにほとんど大きな違いをもたらさなかったという点です。
(p.116-117)

匿名でも顕名でも大きな違いはなかったということ……そうです。それがこのときの日本がほんとうにこわかった証拠です。

と、私は言いたい。

掲示板でも、まじめに、人生経験や職業から得た知識などをもとにして、イラクの人質のことを論じている人でさえ、自作自演説を信じていたり、まだ人質になっていて助かるかどうかわからないのに、人質本人やその家族を非難しているのを見て、そりゃあ、こわかった。

異論をさしはさんだ私が自分のブログを紹介すると、サヨクがアクセスした人の個人情報を集めるための釣りかもしれないから気をつけてという趣旨のレスがすぐについて、びっくりしたこともありました。

こわかったよー!!

人質「自作自演」説が広まった背景の考察で、オルポートとポストマンの『デマの心理学』が引用されています。この引用も非常に参考になります。

とにかく、あの「自作自演」の証拠とされた『ヒミツの大計画』が、不都合な真実ならぬ「おあつらえ向きのリアリティ」だった、という、チキさんの指摘に、そうだ、そうだ、と肯きました。

ところで、関係ありませんが、私はクロスワードパズルが好きで、特に漢字クロスワードパズルが好きなんですが、そこで使われる四字熟語に「自作自演」が出て来ると、この事件のことを思い出してしまいます。パズルの作者は、どう思ってこの四字熟語を使っているのか……もしかして、イラク人質事件のときの三人をばかにしているのか、と思うと、悲しくなるときもあります。別に私はあの三人に特に同情する理由はないのですが、不当にばかにされているのを見ると、やっぱり、悲しくなります。

とにかくとにかく、チキさんも述べていますが、このイラク人質事件は、
「日本で起こったサイバーカスケードのうち最も大規模で、社会的影響の大きかったものの一つ」(p.114)

なのです。

サイバーカスケードといえば、例えばA対Bという意見の対立があったとして、Aの方向に意見が極端に傾いてしまうこと、あるいはAとBの根深い対立を築いてしまうことが問題とされます。しかしここで重要なのは、そもそもA対Bという問題ばかりが排中律(真偽はイエスかノーだけ、AでなければBであり、BでなければAである、その中間は存在しないという状態)的にフレームアップされることで、A対CあるいはC対Dというような、他の議論の可能性そのものが抹消されていくことです。
(p.132-133)


わかる、わかる。掲示板で議論になると、何か他の視点からこの問題を考えることはできないかな、と思って発言すると、争点をそらすな、とか、話をそらすな、とか、言われる。それがイラク人質事件のときにも起こった。私は、自衛隊を撤退するかしないかはあくまでも人質事件とは別に日本の国益の問題として国会で審議して決めるべきで、それはそれとして、人質やその家族を非難しまくるのはおかしい、あの人たちは事件の被害者なんだ、と言ったんだけど、なんか、反対にばかにされてしまった。

自衛隊を撤退させたらUSAに見捨てられて石油がなくなって困る、サヨクは対案がないくせに、対案も出せないのに異論をはさむな。

まあそこまではいいとして、それだからといって、自作自演だの自業自得だのと人質を責めることはないでしょうに。

不都合な事件が起こったにせよ、事件の渦中にある被害者を責めてどうするの。

しかも、日本以外の国の人質になってる人たちに対して、とっても同情的で親切で優しい投稿がまた、多数、現れた。外国の人質は自作自演でないから助けてあげたい、彼らのために何かできないか。
そう言ってるそばで、自分の国の人質には、賠償金を請求するとかいうような意見が多数ある。
おかしいぞ!といっても、だって、あいつら自作自演だもん。って……

つい、思い出に浸ってしまいました。

この、
他の議論の可能性そのものが抹消されていく

危険性については、武田徹さんもマスコミの欠点として、何度も指摘されています。
マスコミはもっとしっかりせよ、むしろ反対に豊富な情報を提供して多用な視点を持てるようにするのが本来だろうが、という意味のことを主張されているのですが……

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

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