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以前、私は、「"transplant community" の二つの意味」という小論を書いたことがある。USAでは、移植医、移植コーディネーターなど、移植医療に携わる専門職集団という意味での"transplant community"と、彼らに加えて、ドナーやドナー家族、移植患者団体に協力するボランティアなども含めた、より広い意味での"transplant community"と、二通りに使われている、ということを、いくらかのUSAの論文や雑誌記事などから考察したものである。 そのとき、私は、"transplant community" は、当然ながら、移植患者のための集団であって、脳死患者のための集団ではない、とも、書いた。そこでは、脳死患者はすなわち潜在的ドナーである。しかし本来、脳死患者を中心とした終末期医療のcommunityもまた、"transplant community" と同等に尊重されるべきである、という考えを表わした。 "transplant community" の二つの意味(てるてる著 2001年4月23日) http://www.lifestudies.org/jp/teruteru08.htm
その後、USAの移植医療についてのレポートを読むと、USAの"transplant community" にとっては、脳死患者はやはりただのbodyでしかなく、もはやpatientではないのだ、と思えてくる。 「The Front Line〜日米医療と臓器移植を考える〜」によると、USAでは、political correctnessが、移植医療の分野でも必要と考えられ、次のような言い換え"alternative word"の利用が推進されているそうである。 「May 21, 2005 移植医療のPOCO」 http://thefrontline.cocolog-nifty.com/the_front_line/2005/05/poco_a69c.html
臓器の「救出」は誰のために行われるのか。移植患者のためである。脳死患者のためではない。 脳死患者の家族にとっては、脳死と宣告されようがされまいが、家族であることに変わりはない。患者との関係はなお「生きて」いる。 しかし、救急医・移植医・移植コーディネーターは、既に脳死患者はただのbodyであるとして、移植医療へ向けての患者家族の取り込み・脳死患者の家族からドナー家族への変換促進交渉を始めなければ、移植患者の命を救う臓器を取り出すことができない。 USAにも、こういう現実に疑問や葛藤を感じつつ、移植患者の苦しみも、脳死患者とその家族の心もたいせつにし、葛藤をむしろ良いものとして、患者の終末期に関わる人々もいる。移植コーディネーターではなく、病院にいるキリスト教のchaplainは、そのような葛藤を自ら進んで担っているようである。岡田篤志は、ドナー家族の心理について、詳細精密な論文を書き、そのなかで、chaplainとOPOスタッフとの違いについて、次のように述べている。 岡田篤志著 臓器提供とドナー家族の悲嘆心理 ―内外の文献研究から― Organ Donation and Donor families' Griefs - a study from internal and external literatures 2002/09/30脱稿 大阪大学大学院医学系研究科医の倫理学教室『医療・生命と倫理・社会』第二号,62-82頁2003年3月20日掲載。 http://www.geocities.co.jp/NatureLand/4760/donorfamily1.html
USAの移植医療における"alternative word"の推進は、なおいっそう、「葛藤」を見えにくく、意識しにくくするための役割しか果たさないのではないか。 私は、日本の移植医療においては、そのような「言い換え」は拒絶してほしいと思う。 |
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「The Front Line〜日米医療と臓器移植を考える〜」にアクセスできなくなりました。 |
terutell 2005/05/22 10:02 |
葛藤を良しとする人たちと、葛藤がないという傾向の人たち。まさに「無痛文明」への分かれ道ですね。人間の意識の底に渦巻く「良し、悪し」の戦いさえもなくなってしまったら、もうお終いですよね。しかしtransplant communityがcommunityであるかぎりは、patientでしょう。じゃなかったらobjetsってことになる。 |
けい 2005/05/23 09:43 |
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