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zoom RSS "transplant community"再考

<<   作成日時 : 2005/05/21 14:40   >>

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 以前、私は、「"transplant community" の二つの意味」という小論を書いたことがある。USAでは、移植医、移植コーディネーターなど、移植医療に携わる専門職集団という意味での"transplant community"と、彼らに加えて、ドナーやドナー家族、移植患者団体に協力するボランティアなども含めた、より広い意味での"transplant community"と、二通りに使われている、ということを、いくらかのUSAの論文や雑誌記事などから考察したものである。
 そのとき、私は、"transplant community" は、当然ながら、移植患者のための集団であって、脳死患者のための集団ではない、とも、書いた。そこでは、脳死患者はすなわち潜在的ドナーである。しかし本来、脳死患者を中心とした終末期医療のcommunityもまた、"transplant community" と同等に尊重されるべきである、という考えを表わした。

"transplant community" の二つの意味(てるてる著 2001年4月23日)
http://www.lifestudies.org/jp/teruteru08.htm

広義の"transplant community" に関しては、「ドナー家族の会」が作られ、会員の手記も発表されている。吉川隆三著「ああ、ター君は生きていた」(河出書房新社、1300円)には、脳死と診断されたときから、臓器提供後まで、いっさいのフォローやケアがなかった場合の、ドナーの遺族の苦しみがなまなましく語られ、その体験に基づいて、移植医療を推進する人々への意見も述べられている。日本の狭義の"transplant community" は、このようなドナーの遺族の声に、積極的に応えていく必要がある。それとともに、ドナーの遺族の声が、移植患者にも届くことによって、広義の"transplant community"が、働きやつながりを強めていくことができると思う。
もう一つ、ドナーにならなかった、「脳の働きの止まった人を中心としたcommunity」も、もっと重視される必要がある。こちらのほうも、インターネットで体験者の手記が発表されている*が、まだまだ、社会的に認識されていない。

* 99年度明治学院大学応募論文 「脳死移植について」 母の脳死体験を通して大野綾子
http://member.nifty.ne.jp/lifestudies/keijiban/kanso018.htm

「脳の働きの止まった人を中心としたcommunity」は、広義の"transplant community" の外にあるものである。臓器不足を解消するためには、狭義の"transplant community" にとっては、むしろ邪魔にさえ見えるかもしれない。しかし、そもそも、脳死の絶対数を考えれば、数を揃えることは、到底不可能である。それよりも、「脳の働きの止まった人を中心としたcommunity」もたいせつにして、移植を受ける人にとっても、臓器を提供した人の遺族にとっても、満足できる医療をめざすほうが、広義の"transplant community" にとってよい未来が開けるのではないだろうか。


 その後、USAの移植医療についてのレポートを読むと、USAの"transplant community" にとっては、脳死患者はやはりただのbodyでしかなく、もはやpatientではないのだ、と思えてくる。
「The Front Line〜日米医療と臓器移植を考える〜」によると、USAでは、political correctnessが、移植医療の分野でも必要と考えられ、次のような言い換え"alternative word"の利用が推進されているそうである。

「May 21, 2005 移植医療のPOCO」
http://thefrontline.cocolog-nifty.com/the_front_line/2005/05/poco_a69c.html

harvesting → removal,または rescue,または recovery
cadaver→ body
cutting→ surgical removal
passed away → dead
total organ harvest→  multiple organ rescue  ……など(その他多数)。


 臓器の「救出」は誰のために行われるのか。移植患者のためである。脳死患者のためではない。
 脳死患者の家族にとっては、脳死と宣告されようがされまいが、家族であることに変わりはない。患者との関係はなお「生きて」いる。
 しかし、救急医・移植医・移植コーディネーターは、既に脳死患者はただのbodyであるとして、移植医療へ向けての患者家族の取り込み・脳死患者の家族からドナー家族への変換促進交渉を始めなければ、移植患者の命を救う臓器を取り出すことができない。
 USAにも、こういう現実に疑問や葛藤を感じつつ、移植患者の苦しみも、脳死患者とその家族の心もたいせつにし、葛藤をむしろ良いものとして、患者の終末期に関わる人々もいる。移植コーディネーターではなく、病院にいるキリスト教のchaplainは、そのような葛藤を自ら進んで担っているようである。岡田篤志は、ドナー家族の心理について、詳細精密な論文を書き、そのなかで、chaplainとOPOスタッフとの違いについて、次のように述べている。

岡田篤志著
臓器提供とドナー家族の悲嘆心理 ―内外の文献研究から―
Organ Donation and Donor families' Griefs - a study from internal and external literatures
2002/09/30脱稿 大阪大学大学院医学系研究科医の倫理学教室『医療・生命と倫理・社会』第二号,62-82頁2003年3月20日掲載。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/4760/donorfamily1.html

 だからといって、MongovenはOPOを告発しているのでも、逆に、チャプレンたちを神聖化するつもりもないことを注意している。OPOスタッフでもドナー家族のグリーフサポートに熱心に取り組むことも可能であるし、提供率のアップのために始まったグリーフサポートであるにせよ、実際に悲嘆する家族のニーズを適切に満たすことも可能であるからである。結果からみれば、OPOスタッフとチャプレンの悲嘆家族に対する効果ははっきりと区別がつかないかもしれない。しかし、背景になっている臓器獲得とグリーフサポートの優先順位の違いや、「葛藤」の存否にMongovenはこだわりを見せている。
 「私はチャプレンたちが共通して繰り返していた『葛藤を感じることはよいことだ』という言葉を忘れない。これに比べて、臓器提供を促進する機関の内部では、葛藤を『よい』とする感覚が不在であることに驚きを感じる。チャプレンたちの声は預言のように聞こえるかもしれない。その声は、政策方針的議論の中ではしばしば覆われ見えなくなっている(65-66)問題を考えるようにわれわれを促す」Mongoven2000。
 臓器獲得の課題を担っている組織の者による、提供率増加の意図を背景に持ってなされるドナー家族へのグリーフサポートであれ、結果としてドナー家族の悲嘆心理に対して効果的に作用するとしたなら、殊さらに事挙げて問題視する必要はないのかもしれない。しかし、Mongovenが指摘するOPOスタッフとチャプレンのグリーフサポートへの姿勢の差異に象徴されるような悲嘆家族への姿勢、さらには移植医療そのものに対する姿勢の違いは、現実的な結果としては区別できないものであったとしても、理念的には決定的なものではないだろうか。臓器移植医療は、提供の諾否に対する決定の自由が、医療環境的にも社会環境的にも繊細に確保されている条件の下でのみ真正なかたちで成り立ち、また、その条件においてのみ多くの人々の理解を得ることができるだろう。Mongovenの指摘するように、OPOにとって、悲嘆家族は臓器獲得のための手段や道具になっているという事実は、たとえドナー家族へのグリーフサポートが適切に行われていたとしても、はやり移植医療に対する不信感を招来することになるだろう。


USAの移植医療における"alternative word"の推進は、なおいっそう、「葛藤」を見えにくく、意識しにくくするための役割しか果たさないのではないか。
私は、日本の移植医療においては、そのような「言い換え」は拒絶してほしいと思う。




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「The Front Line〜日米医療と臓器移植を考える〜」にアクセスできなくなりました。
臓器移植法改正の論議が進む現在、日本人として是非知っておかねばならない内容がレポートされていると思いますので、もしもアクセスできる方がいらっしゃいましたら、是非、内容をお知らせくださいませ。
terutell
2005/05/22 10:02
葛藤を良しとする人たちと、葛藤がないという傾向の人たち。まさに「無痛文明」への分かれ道ですね。人間の意識の底に渦巻く「良し、悪し」の戦いさえもなくなってしまったら、もうお終いですよね。しかしtransplant communityがcommunityであるかぎりは、patientでしょう。じゃなかったらobjetsってことになる。
けい
2005/05/23 09:43

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