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近年、生体移植のドナーのための「ドナー外来」を設ける病院が出て来たが、「ドナー健康手帳」というものはまだ存在しない。これは、「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」(日本肝移植研究会、2005年3月)で初めて提案されたものである。 日本肝移植研究会 http://jlts.umin.ac.jp/ 「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」では、ドナー外来ネットワーク・生体肝移植ドナー経験者による相互支援体制の構築と充実をはかるとともに、ドナー登録制度とドナー健康手帳を提案している。 さらに、ドナーの意思決定に際して、移植専門医以外に、移植に携わらない内科や小児科との連携が図られること、レシピエントの予後が悪いときのドナーへのケア、ドナー退院時の指導改善なども提言している。 移植医療はレシピエントの救命・健康の回復のために行われるが、生体移植は、そのために、別の健康な人間のからだを、わざわざ傷つけたうえで、その健康の回復を図らねばならない、という矛盾を含んでいる。なぜそんなことが許されるのか、という根本的な倫理的問題があるが、現実に移植医療が実施されている以上、ドナーの健康の回復を図らねばならない。生体移植における「ドナー健康手帳」は、心臓死・脳死移植における臓器提供意思表示カードとともに、移植医療の何たるかを示す最もわかりやすい象徴である。 「生体肝移植ドナーに関する調査」は、2003年に結成された「生体肝移植ドナー体験者の会」が、生体肝移植に携わる医療専門職でつくる「日本肝移植研究会」にはたらきかけたり、厚生労働省に要望書を出したりして、実現したものである。 生体肝移植ドナー調査に関する要望書(2003年2月4日) http://www.lifestudies.org/jp/seitai.htm このように、「生体肝移植ドナーに関する調査」では、まずドナー体験者自身からの強い要望があって、それに応じて、厚生労働省の研究事業として、日本肝移植研究会が医療専門職と社会学者とによる調査委員会を作っている。調査そのものは医療専門職が行うが、医療の対象となった患者側が主導しているため、研究者だけでなく一般市民にもわかりやすい報告がこころがけられ、広く社会に訴える内容となっている。 「患者側が主導している」と述べたが、私は、生体移植ドナーとは、自らが病気になったのではなく、ひとりの患者を救うために臓器を提供することによって「患者」になった人々である、と思う。すなわち、医療が作り出した患者である。「生体肝移植ドナーに関する調査」は、医療行為によって、健康な人が患者になるということ、その医療行為が生活・人間関係全般に影響をもたらすことを、詳細に報告している。 生体肝移植ドナーの問題については、個人による先行研究がある。 清水準一 http://www.j-shimizu.net/ 清水準一「日本における生体肝移植のドナーとしての体験とニーズに関する調査」 http://square.umin.ac.jp/%7Ejunichi/lrlt_report.pdf 清水準一の調査は、「家族社会学研究」第14巻第2号(2003年1月)の、「小特集 『家族愛』の名のもとに:生体肝移植をめぐって」(p.128-161)に概要が報告されている。 「生体肝移植ドナー体験者の会」と「家族社会学研究〜『家族愛』の名のもとに:生体肝移植〜」 http://www5f.biglobe.ne.jp/~terutell/20030620.livingdonor.htm 「家族社会学研究」の特集のタイトル「『家族愛』の名のもとに」は、なぜ生体移植という医療が許されるのか、という問いに対する一つの答えを含んでいる。 日本肝移植研究会の「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」によると、生体肝移植の件数は、1989年の島根医科大学の最初の事例から2003年12月までで2667例(初回2595例、他は再移植・再々移植)と報告されている。そのうち、アンケート調査に回答があったのは1480件である。 アンケートの項目には、ドナーの性別・年齢、レシピエントが小児だったか成人だったか(18歳未満と18歳以上とで分けている)、レシピエントとの続柄、レシピエントが現在死亡しているかどうか、ドナーが提供したのは肝臓の左側か右側か(左側のほうが切除部分が小さくて危険度も小さく、小児に提供することが多い)、ドナーの術後の体調の回復状況・術後の経過の順調さ・入院期間・術後に生じた症状・術後の定期的な受診の状況、ドナーの将来の健康への不安・「ドナー外来」に関する要望、術前の生体肝移植に関する説明の概況・説明の評価・移植施設における移植医以外の医療者からの説明の状況・医療者以外の移植経験者との相談・ドナーになるという意思決定までの状況・意思決定にまつわる経験や思い・意思決定における検討項目・印象に残っている言葉・ドナーに対する補償制度への要望・、入院生活に伴う経験・生体肝移植手術に伴う経済的負担・就労や学業に関する状況・退院後の生活での負担感と調整の必要性、家族との関係、レシピエントの状況、レシピエントが亡くなった場合、提供に対する総合的な評価、このアンケート調査の問題点、が挙げられている。 「アンケート調査の問題点」というのは、アンケートの回収率が61%で、回答出来なかった対象者が3割にのぼることや、アンケートに苦痛を感じる対象者がいたことなど、個人情報保護や倫理的な問題に関するものである。アンケートやインタビューが調査対象者に苦痛を与える場合について、この調査よりも前に、社会学者の武藤香織によって、トリオ・ジャパンのセミナーで報告されている。 第10回トリオ・ジャパン・セミナー「臓器提供-現状と課題(3) 生体肝移植の経験から」(2002年11月17日) http://square.umin.ac.jp/trio/seminar/seminar10.html 「生体肝移植ドナーに関する調査」では、選択式や「はい・いいえ」式の回答欄だけでなく、自由記述式の回答欄も多数設けられている。その結果、統計的なデータによって全体の傾向が浮かび上がるとともに、一つ一つの移植事例のなまなましい貴重な証言が寄せられている。 多数の項目のなかから、ドナーの「意思決定にまつわる経験や思い」についての回答で、家族と話すことへの「ためらい」と、「意思決定における検討項目」の部分を抜き出してみる。というのも、まさに「家族愛」の実態がここにあると思うからである。
手術後の家族との関係については、良い面も悪い面も報告されている。関係が悪化するのは、レシピエントが死亡した場合が多いが、レシピエントが生存している場合にもある。
レシピエントの予後が悪かったり亡くなった場合は、家族関係だけでなく、移植医療に対する不満や不信感が、レシピエントの状態悪化や死亡と直接関連づけられなくとも、そのことをきっかけとしてクローズアップされるようである。
私は、移植医療に携わる専門職は、本来は生体移植というものはあってはならぬものだとの負い目があるために、ドナーが患者であることを忘れたがっているのではないか、と気を回してしまう。 前出のトリオ・ジャパン・セミナー「臓器提供-現状と課題(3) 生体肝移植の経験から」で講演している河野太郎衆議院議員は、生体肝移植ドナーであるが、生体移植よりも脳死移植をふやすことが先決と考え、本人の事前の書面による同意がなくとも、脳死後に家族が同意するだけで臓器提供できるという臓器移植法改正案を作っている。 臓器移植法改正に関する河野私案について http://www.taro.org/activities/opinion/organ.html 一方、「生体肝移植ドナー体験者の会」は、生体移植一般のドナーの保護を規定する項目を臓器移植法に付加することを要望している。 「生体肝移植ドナー体験者の会」から自民党への要望書(2004年02月10日) http://www5f.biglobe.ne.jp/~terutell/20040210youbousho.htm 「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」からは、生体移植のドナーは「患者」であることを忘れるな、という声が聞こえてくる。 だからといって、脳死移植ならばドナーは「死者」であるからよいなどと言うこともできない。生体肝移植ドナーのひとり、鈴木清子氏は、やはり前出のトリオ・ジャパンのセミナーで、「生きる側の人たちの視点だけでものごとを語らないでもらいたい」と、レシピエントであるこどもが亡くなって、「大切なものをなくしながら生き続けなければいけない」立場から、述べている。 |
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生体肝移植を扱ったテレビドラマ
きょう、2005年1月22日(土曜日)の夜、9時から、生体肝移植を扱ったテレビドラマが放送されます。 ...続きを見る |
てるてる日記@WebryBlog 2005/05/04 16:12 |
「ドナー外来、ドナー健康手帳」その後
以前、「生体肝移植ドナーに関する調査報告書」を、「生体肝移植ドナー体験者の会」から送って頂き、このブログでも紹介した。 ...続きを見る |
てるてる日記 2007/02/20 18:22 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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生体肝移植は法律でぜひとも禁止して欲しい。 |
肝心かなめのおばかさん 2005/05/16 03:12 |
てるてるさん、調査報告書のことを取り上げてくださって、ありがとうございます。 |
清水 準一 2005/05/16 17:42 |
清水さん、お知らせありがとうございます。 |
terutell 2005/05/17 08:24 |
>肝心かなめのおばかさん |
terutell 2005/05/17 08:32 |
>清水さん |
terutell 2005/05/17 21:29 |
色々ご配慮いただき、すみません。 |
清水 準一 2005/05/19 23:47 |
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